自治体議員フォーラム栃木は4月24日から25日にかけて「県外視察研修」を実施した。
今回は東日本大震災から7年経った宮城県の復旧、復興状況の進捗を把握するため宮城県内各所で視察研修を行った。
初日に訪れた仙台市役所では「宅地被害復旧」、「地域防災計画・避難所運営マニュアル」および「震災記録誌の活用」について担当者から説明を受けた。
仙台市は東日本大震災により、仙台駅から概ね5キロ圏内において、昭和30年代から昭和40年代にかけて造成された住宅地を中心に地滑りや地盤の崩壊、宅地擁壁の損壊等、広範囲にわたり甚大な被害が発生した。
本来、私有財産である宅地の復旧は、個人負担が原則であるが、大震災によって甚大かつ広範囲に被災したことから、早急に被災宅地の復旧を進め防災機能の向上を図るため、まとまった範囲で宅地被害が発生している地区については再度災害防止の観点から公共事業による復旧を行った。
また、想定を上回る規模の津波の発生や長期にわたるライフラインの途絶など、行政の限界と自助、共助の重要性など多岐にわたる課題が浮き彫りとなったことから、地域防災計画の全面的な見直しを実施。『108万市民の総合力による防災』を目指した取り組み事例などが紹介された。
その後、津波によって被災した「震災遺構 仙台市立荒浜小学校」に向かった。海岸線から700mの位置にある荒浜小学校は、東日本大震災の津波により4階建て校舎の1階と2階が大きく被災したが、地域の方々や子どもたち320名が屋上に避難し、難を逃れた。校舎内部には、なぎ倒された鉄柵や天井板が外れたままの廊下などがそのままの状態で残されており、津波の威力と脅威を改めて実感した。
そして、津波避難施設として整備した「中野5丁目津波避難タワー」を視察。津波により被害を受けた仙台市東部地域の再生に向けて、平成26年度から平成28年度にかけて、東部地域の13カ所に津波避難施設(タワー型6カ所、ビル型5カ所、津波避難屋外階段2カ所)が設置された。「中野5丁目津波避難タワー」は鉄骨造りの2階建てで、収容人数は約300名。防寒、防風対策として外壁で囲った非難スペースを確保しており、内部には毛布やカセットガスストーブが備蓄されていた。
2日目は、青葉区折立5丁目の地滑り被害の復旧について現地視察を行った。折立地区の現地調査は平成24年1月に続いて2回目。(2012/1/30 仙台市行政および被災地視察)
折立地区は、昭和40年47年に造成された戸建ての住宅団地であり、谷を盛土で埋め立てて造成された「谷埋め盛土」に分類される。盛土材(礫混り粘性土)が非常に柔らかかったこと、地下水が豊富な状態であったことにより、震災の大きな揺れによって“全体すべり”と盛土表層部の“ひな壇すべり”が発生した。
復旧工事は、団結工(土にセメント等を混合し、土質の強度を高める工事)および宅地擁壁再築(壊れた擁壁を撤去し、再度擁壁を作り直すこと)を行い、平成24年12月に着工、平成27年3月に完了した。6年前に視察した際には、完全な復旧は困難に見えたが、見事な再生で生活を取り戻していた。
次に「せんだい3.11メモリアル交流館」を訪れた。当施設は、東日本大震災の記憶と経験を未来や世界に継承していくため、震災被害や復旧・復興の状況を伝える常設展と、東部沿岸地域の暮らし・記憶など様々な視点から震災を伝える企画展で構成されている。
最後に、津波被害によって集団移転をした東松島市あおい地区を訪れ、防災集団移転地のまちづくりについて、あおい地区会会長の小野竹一さんより説明を受けた。
東松島市は津波によって大きな被害を受け、沿岸地域は「津波防災(災害危険)区域」に指定され、宅地利用が不可能になった。そのため、市は市内7カ所に集団移転先となる造成工事を行い、賃貸型の災害公営住宅や個人による戸建て用の防災集団移転宅地を整備した。
あおい地区(旧東矢本駅北地区)は、災害公営住宅307戸、防災集団移転273区画からなる被災地全体でみても580世帯が暮らす最大の集団移転地区。
あおい地区の最大の特徴は、住民が率先してまちづくりに参画し、住みよいまちにするために様々な意見や要望を集め、行政と連携を取りながらまちづくりを行っていること。
例えば、住民が中心となり「まちづくり協議会」を設置し、区画の決定や災害公営住宅の間取りの修正、地区の名称なども、住民同士の協議で決定した。
今後は、住民同士で自主的に支える体制の確立を目指し、住民による住民への見守り活動を計画している。
〔参加者〕
佐藤栄県議、斉藤孝明県議、松井正一県議、加藤正一県議、船山幸雄県議、平木ちさこ県議、中屋大県議、山田みやこ県議、今井恭男宇都宮市議、駒場昭夫宇都宮市議、中塚英範宇都宮市議、大貫毅鹿沼市議、塚原俊夫小山市議、石島政己小山市議、早川貴光佐野市議、落合誠記壬生町議、篠原操塩谷町議、渡辺典喜1区総支部長