8月28日(木)、民主党栃木県連(簗瀬進代表)と「県民ネット21」(佐藤栄代表)は、県庁・特別会議室にて連名による「平成20年度中間期における県政運営及び9月補正等に関する要望書」を福田富一栃木県知事に提出した。
佐藤栄代表は 「財政が非常に厳しい中、社会的弱者に対して行政がどのように対応していくか一つのターニングポイントになるよう提案していきたい」とし、危機的財政状況を打開した予算編成となるよう要望した。
9月8日(月)、福田知事から回答を頂く予定。
■9/8(月)知事から回答
民主党栃木県連(簗瀬進代表)と「県民ネット21」(佐藤栄代表)が8月28日に行なった上記要望について、県庁・特別会議室にて福田知事より回答があった。
冒頭に知事から、「今年度の財政状況は、普通交付税が当初予算を上回っているものの、原油価格高騰等による景気の減速で税収が今後大きく下振れする懸念もあることから、現時点では歳入予算の確保が不透明であるが、ご要望の趣旨を十分に踏まえ、安全・安心な県民生活の確保、とちぎの未来と元気づくりなど、緊要な課題に限定的に対処する」とあいさつ。
その後、回答を受け佐藤栄代表は 「補正予算は25億円強となり、次年度の予算編成は大変厳しいものとなるが、社会的弱者を切り捨てることのない健全な運営を行なっていただきたい。さらに今後の様々な課題を9月の一般質問で論戦させていきたい」と述べた。
【要望内容及び回答は以下の通り】
1.県政運営の基本姿勢に関すること
(1) 県財政の健全化について
(2) とちぎの元気な森づくり県民税について
(3) 霞ヶ浦導水事業について
(4) 地域医療への支援について
2.9月補正に関すること
(1) ふるさと納税制度の運用について
(2) 学校耐震化の促進について
(3) グリーンスタジアムの補正予算での対応について
(4) 原油・食料品等の価格高騰対策について
3.新年度予算編成に関すること
(1) 危機的財政状況の打開に向けて
(2) 自殺対策の充実について
(3) 次期高齢者保健福祉計画について
(4) 遊休農地対策について
(5) とちぎ女性自立支援センター(仮称)について
【補正予算に関する要望内容及び回答】
1 県政運営の基本姿勢に関すること
(1) 県財政の健全化について知事自身、「本県はこのままでは財政再生団体に転落しかねない。全庁で危機 感を共有した。」と述べている。県債残高は1兆円近くあり、常に県財政の健全化が県政運営の最大の課題といっても過言ではない。
そこで、県財政の健全化という観点から、莫大な経費を伴い、ますます県財政を圧迫する「総合スポーツゾーン構想」については、時間をかけ、慎重に検討されたい。「県体育館」については、老朽化の状況等を考慮すると、整備計画に異論はないが、その他の施設等については、現有施設を最大限に生かし、「改修あるいは配置転換を基本とした構想」となるよう強く要望する。
【回答】総合スポーツゾーンについては、当面、陸上競技場兼サッカースタジアムと体育館の整備を優先することとしている。陸上競技場兼サッカースタジアムについては、全国大会等の開催に必須の第1種公認を継続するために整備が必要であるとともに、体育館については、老朽化が著しいなど、いずれも整備の必要性が高いものである。これらの整備に当たっては、本県の厳しい財政状況を踏まえ、国庫補助の活用あるいは民間活力の導入など、様々な角度から検討を行っている。
(2) とちぎの元気な森づくり県民税について
導入前の説明では、公益的機能の持続的発揮や地球温暖化防止のため、温室効果ガスの吸収源として多大な役割を果た す森林の重要性が強調され、早急な対応として今年度から導入された。しかし、里山林整備については、事業主体である市町からの交付申請額は予算計上総額に達していない。
新税の導入には、十分な準備が必要であること、また、10年間という期限付きのものであることから、税導入の目的に沿った計画的な事業の実施と透明性の確保に万全を期しての取り組みを強く要望する。
【回答】里山林の整備については、引き続き、市町と連携した地元説明会を開催し、地域での合意形成を促進するとともに、市町に対する技術的支援を通じて、計画的な事業実施に努めていく。
また、税事業については、本年度設立した「とちぎの元気な森づくり県民税事業評価委員会」で毎年評価を受け、その結果を公表するなど、事業の検証と透明性の確保に努めていく。
(3) 霞ヶ浦導水事業に対する本県漁業関係者等への支援について日本一の鮎の漁獲量を誇る那珂川は、全国主要河川でも数少ない、今日まで大規模開発が行われたことのない、本県が誇る清流である。しかし、30数年前に計画された「霞ヶ浦導水事業」が、今、多くの問題を抱えながら進行している。
那珂川の自然環境を守り、漁業への影響を危惧する関係者からは、法的対応も辞さない反対の意思表示がされている。県においても、国への施策要望の中で、異例の説明責任を求めているが、今後は、漁業関係者を始めとする流域住民の意思を尊重した、明確な対応をとられたい。
【回答】県としては、那珂川の水産資源の保護、自然環境の保全の観点から、国土交通省に対して、「水産資源への影響防止や自然環境の保全に十分配慮し、漁業関係者の不安の払拭に努める」よう要望した。
今後は、国が行う調査等を踏まえ、必要に応じて国に対し、より詳細な調査の実施や、積極的な情報公開、漁業関係者をはじめとする流域住民への説明などを求めていく。
(4) 地域医療への支援について
JA栃木厚生連では、運営する塩谷総合病院について、経営の悪化などを理由に、今年度末に撤退するとの報道がなされた。当病院は、塩谷地区の中核病院として、また、県の第二次救急医療機関として、地域医療体制を確保する上で、極めて大きな役割を果たしてきた重要な医療機関であるが、JA栃木厚生連の撤退表明後、診療機能が大幅に低下し、地域医療の崩壊が起こりかねない状況である。
今般、栃木県済生会を移譲先として協議が進められることとなったが、塩谷地区における重要な病院機能を存続させ、当地域の医療の空白を招くことのないよう、適切な対策を講じるとともに、この地域の第二次保健医療圏における医療体制の充実・強化を図られたい。
【回答】塩谷総合病院は、地域住民の安全な暮らしを支える上で不可欠な病院であり、県としては、地元市町や関係団体と連携しながら、栃木県済生会への円滑な移譲に向けての支援に努めていく。また、塩谷総合病院に限らず、県内各地の中核病院の医師不足が依然として深刻であることから、引き続き各種の医師確保対策等を積極的に推し進め、県内の医療提供体制の確保に努めていく。
2 9月補正に関すること
(1) ふるさと納税制度の運用について
本制度については、周知を十分に図る必要があると思われるので、アイデアに富んだPR、啓発になお一層取り組まれたい。
また、使途を明示する場合は「森林保護」「福祉向上」「杉並木保護」の3つの分野を中心に選択するとのことであるが、受け入れに当たっては、寄附者の意向に沿った柔軟な対応を図られたい。
【回答】「ふるさと“とちぎ”応援寄附金」については、県ホームページに掲載しているほか、主に県外の方々を対象に、各種イベントや各県人会を通してパンフレットの配布等を行うなどのPRに努めている。
今後もさまざまな機会を捉え、効果的なPR活動を実施し、積極的に周知を図っていく。
また、寄附金の使途については、3つの分野に加えて使途を定めずに幅広く活用するメニューを設定しているが、これらに限定することなく、ふるさと納税制度の趣旨に沿って有効に活用していく。
(2) 学校耐震化の促進について
本県の県立高等学校における耐震診断実施率は35.9%で全国最下位である。国では「改正地震防災対策特別措置法」に基づき、3ヶ年に限定して地方公共団体の財政負担を軽減しながら、危険性が 高い公立小中学校の校舎約1万棟の対応を急ぐこととしている。こうしたことから、本県においても早急に県立高等学校の耐震診断を実施するとともに、耐震化を促進されたい。
【回答】県立高等学校校舎の3階以上かつ延べ床面積1,000平方メートル以上の建築物については、平成15年度までに耐震診断を終了している。2階以上または延べ床面積200平方メートル超の建築物については、昨年1月に策定した「栃木県建築物耐震改修促進計画」に基づき、耐震診断を今年度から2か年で実施し、耐震診断実施率の向上を図っていく。
また、耐震補強については、平成18年2月に策定した「県立高等学校耐震補強基本方針」に基づく耐震補強計画を前倒しして実施することとしたところであり、今後とも早期に耐震化が図れるよう努めていく。
(3) グリーンスタジアムの補正予算での対応について
今般の補正予算に7,900万円が整備費として計上され、全体経費として12億7,000万円が見込まれているが、一時的な改修に貴重な財源を投入するより、この際、グリーンスタジアムを栃木SCが将来にわたってホームスタジアムとして 使用できる施設とする方向で検討されたい。
なお、貴重な県の財源を一つのプロサッカーチームのために投入することについて、県民にその趣旨を十分に説明するとともに、栃木SCの経営状況について公表を促し、透明性を高めるように努められたい。
また、周辺整備等に関しては、宇都宮市との協議を十分に行い、県と共に地元 チームを支えていくという共通認識に基づく可能な限りの支援を求められたい。
【回答】県としては、施設の老朽化が目立ち、また全国大会等の開催に必須の第1種公認を継続するために整備が必要な陸上競技場について、栃木SCのホームスタジアムの確保の観点も踏まえ、陸上競技場兼サッカースタジアムとして整備することとしたものであり、グリーンスタジアムについては、あくまで、新たなスタジアムを整備するまでの暫定的な施設として、必要な改修を行うものである。
本県にJリーグチームが誕生することによる効果について、県政広報等様々な機会を捉え、県民に説明していくほか、栃木SCの健全な経営については、成績、ホームスタジアムとともにJリーグ加入要件の一つであり、プロのサッカークラブ自身が取り組む最も重要な事項であることから、県民への説明と併せ、栃木SCの行うべき責務として、適切な対応を求めていく。
また、県有施設であるグリーンスタジアムの改修は、県の役割であるが、ホームタウンである宇都宮市との役割分担については、市と協議を行っていく。
(4) 原油・食料品等の価格高騰対策について
経済のグローバル化の影響もあって、日本国内においてはガソリンや灯油、食料品を始め、多くの生活必需品が高騰を続けている。
その結果、地域間格差は更に拡大し、 県内においても多くの県民の生活を直撃している。とりわけ、年金生活者や生活困窮者の家計が著しく困難になってきている。このような状況下で、県においても環境に配慮したリサイクルや省エネルギー対策を講じると共に、生活困窮世帯に対する原油価格高騰対策を図られたい。
【回答】生活困窮世帯に対する原油価格高騰対策については、昨年末に国において決定された緊急対策により、地方公共団体の自主的な取組に対し特別地方交付税措置がなされ、これを受け、昨年度は、県内の24市町において、それぞれ自主的な判断で、生活保護世帯等に対する灯油購入費の助成が行われたところである。
今年度も、国において6月に「原油等価格高騰対策」が決定され同様の措置が講じられることとなっている。
なお、県社会福祉協議会が実施している生活福祉資金貸付制度では、低所得世帯を対象とした冬期間の暖房用燃料の一括購入費について貸付対象としており、県としても同制度の周知を図っているところである。
また、省エネルギーの取組としては、県民一人ひとりが身近なことから取り組むことができる行動を促すための、「“とちぎ発”ストップ温暖化アクション」などの事業を実施している。これらの取組は、温室効果ガスの削減効果とともに、光熱水費等の削減にもつながることから、引き続き、県民総ぐるみによる取組を推進していく。
3 新年度予算編成に関すること
(1) 危機的財政状況の打開に向けて
「地方公共団体の財政の健全化に関する法律」に基づく平成19年度健全化判断比率等(見込)についての概況を見ると、5つの指標とも健全段階ということであるが、平成19年度普通会計決算(見込)については、歳入歳出とも3年連続で前年度決算額を下回ったことが明らかになった。当然、今後ともさらに厳しくなることが予測される。
県の貯金である財政調整的基金の残高は、平成20年度末見込みで118億円しかなく、財源不足は300億円-400億円になると見込まれている。
山梨県甲府市では、第三者の視点で事業の必要性などを再検討するため、NPO、市民とともに「事業仕分け」を行うという思い切った対策に取り組んだとのことである。そこで、従前の慣例や申し合わせにとらわれることなく、知事が常に口にされている「選択と集中」を大胆に行い、現在の財政の危機的状況打開に努められたい。
【回答】今年2月に作成した今後5か年間の中期財政収支見込みでは、今後、毎年度300億円-400億円の財源不足が見込まれ、財政調整的基金の残高が底を突きかねない現状から、来年度の予算編成はより厳しいものになると受け止めている。
このため、まず、今年度予算の執行に当たり、県民からの税金を財源としていることを職員一人ひとりが十分に認識しながら、効率的な執行と経費の節減に努め、基金の取り崩しを最小限に抑えることとし、その上で、当面の最大の課題である平成21年度当初予算の編成に全力を挙げていく。予算編成に当たっては、引き続き職員の意識改革を進めながら、ゼロベースの視点に立ち、事業の徹底した選択と集中、そして効率化に取り組んでいく。その上で、基金に頼らない持続可能な財政基盤の確立を目指し、中長期的な視点から事務事業の見直しを行っていく。
(2) 自殺対策の充実について
近年、年間自殺者は、3万人を超える異常事態が続いており、昨年は交通事故死亡者の約6倍の人が自殺により亡くなっている。本県も残念ながら例外ではなく、平成10年以降、年間500人を超える自殺者を数えてしまっている。本県ではすでに自殺対策推進本部が設置され、対策の具体的な方向性が示されていると同時に、その取り組みも実行されてはいるものの、対策効果の具現化には相当の時間がかかると思われる。
したがって、地域や職場・家庭等の最も身近なフィールドにおける自殺前兆の早期発見や自殺予防としての心理的ケアに、より多くの人たちが理解と関わりを常に認識できる環境づくりが肝要である。
自殺を個人の問題にとどまらない社会現象として捉え、緊要な課題として、より強力な情報提供体制や支援体制の充実、また対策そのものの普及・啓発のさらなる促進を講じられたい。
【回答】県では、官民相互に連携しながらオール栃木体制で自殺対策を推進していくため、昨年7月に「栃木県自殺対策連絡協議会」を設置し、情報交換や意見交換などを通じて、自殺対策に関する共通認識の形成と先進的な取組事例の普及拡大等を図っている。
また、自殺対策講演会やシンポジウムの開催、自殺対策パンフレットの作成・配布などの普及啓発事業や、うつ病の早期発見・治療のためのかかりつけ医を対象とした研修、相談支援業務に従事する職員の育成、相談窓口の充実強化等を実施している。
今後も、各保健所や精神保健福祉センター、各種団体の相談支援体制等の県民への周知を強化するとともに、自死遺族への支援等も含めた自殺対策の充実に努めていく。
(3) 次期高齢者保健福祉計画について
栃木県高齢者保健福祉計画「はつらつ プラン21」は今年度が第3期計画の最終年度であり、来年度からの第4期計画が 策定されようとしている。
平成17年の「介護保険法」改正を受け、予防重視型システムへの転換と地域密着 型サービスの創設等を目指したが、結果として、魅力ある具体的施策が不十分であったり、事業所の運営状況も厳しいケースが多々見受けられること等から、第4期計画においては概念論にとどまらない、より具体的な施策の策定と実行が望まれる。
超高齢社会が到来しようとする今、老後を安心して迎え、過ごしていくためには、介護と医療の連携・ネットワーク体制の整備と強化が不可欠である。
したがって、第3期計画の厳正な評価をするとともに、第4期計画を実効性あるものとするためにも、本県の実情に即した、新たな目標設定と具体的施策の充実を求める。
また、厚生労働省の定める「施設介護の利用者割合37%以内」を超える希望者への対策について、施設に入居できない数多くの「施設介護難民」の方々から今後入居を希望される方々の想定も含めて、明確に「はつらつプラン21」第4期計画に盛り込むよう要望する。
さらに、これまでの不十分な国の施策に対して、より現実的な改善が図られるよう、あらゆる機会を通じた要望活動等を行うよう求める。
【回答】「栃木県高齢者保健福祉計画(はつらつプラン21)」第4期計画については、県民が参加する策定懇談会の意見などを踏まえながら、現在策定作業を進めている。
計画の策定に当たっては、第3期計画の実績評価と課題検討の結果を踏まえ、介護予防事業の推進や医療・介護資源のネットワーク化など、国の動きも見極めつつ、具体的な施策の充実に努めていく。
また、現在、施設入所申込者調査を実施中であり、その結果を第4期計画に適切に反映していく。さらに、良好な介護サービスを確保するため、様々な機会を捉え、国に対し介護報酬の見直しなどを要望していく。
(4) 遊休農地対策について
近年、担い手の高齢化、兼業化や生産調整面積の拡大などにより、耕作放棄地や不作付け地といった遊休農地が年々増 加しており、雑草の繁茂や病害虫の発生など、農業・農村の現場で問題を引き起こしている。
そこで、遊休農地の実態を詳細に調査するとともに、その解消に向けた対策等を講じられたい。
【回答】県では、これまで遊休農地対策事業により、遊休農地の実態把握や解消対策の検討、さらには解消活動の実践など、市町村における取組を支援してきた。
併せて、今年度、国では全国的な耕作放棄地の詳細調査を市町村主体で進めており、これらの取組を支援しながら遊休農地の解消対策に取り組んでいく。
(5) とちぎ女性自立支援センター(仮称)について
とちぎ女性自立支援センター(仮称)が整備されることは、DV被害者の増加、婦人保護事業の充実が課題の本県の現状 から見て、女性政策の一歩前進として大変意義深いことである。
整備計画の策定に際しては、これまでの入所状況等から判断して定員や施設面積等を決定したと思われるが、自立までの支援となると、さらにきめ細かな、切れ目のない長期的な支援が求められる。
財政が厳しい現在、建設費の圧縮とともに、民間との役割分担など運営面についても充分に検討し、最小限の予算で最大限の支援が可能な状況を創出されたい。
【回答】女性自立支援センター(仮称)の規模や機能については、県議会をはじめ、有識者や関係機関、民間団体等で構成する懇談会等からの意見を伺いながら検討を進めてきた。
今後は、関係機関や民間団体との役割分担や連携など、運営面についても幅広く意見を聞きながら検討を進め、女性の抱える様々な問題に的確に対応できる施設として整備していく。
なお、経費に関しては工夫をしながら可能な限り節減に努めていく