2012年4月7日、とちぎ健康の森にて、民主党栃木県連と連合栃木の共催により、「『社会保障・税一体改革』について考える対話集会」を開催した。
講師として民主党より前原誠司政策調査会長((以下、前原政調会長)、連合からは花井圭子総合政策局総合局長(以下、花井総合局長)と仁平章経済政策局局長(以下、仁平局長)が出席し、参加した350名の党員・サポーター及び労働組合員に対して、一体改革の必要性や現在の財政状況、改革に向けた取り組み等について講演した。
前原政調会長はまず、日本の成長過程における4つの制約要因((1)人口減少社会、(2)少子高齢化、(3)莫大な財政赤字、(4)長引くデフレ)を挙げ、「これらは日本が乗り越えていかなければならない課題であり、そのためには、デフレからの脱却と経済成長が何よりも大事である」と強調した。
その解決策として、「新成長戦略を着実に実行していくことと同時に、政府、日銀が一体となってデフレ脱却に向けての政策を総動員で行っていく」と決意を述べ、「今後日本は、人口減少、少子高齢化が進むなかで、一定の消費税を上げ、国の安定収入を上げることが必要ではないか」と増税への理解を求めた。
5%増税の中身については、1%は社会保障の充実、残り4%は現行の社会保障を安定化させるためとし、社会保障安定化と財政の健全化の両立を図ることを説明。
また、社会保障の充実策として、子ども・子育て対策、医療介護の充実、年金制度の改善、貧困・格差対策強化の4本柱を挙げた。更には、マイナンバー(総合合算制度)の導入によって、所得に応じた給付付税額控除が受けられるようになる低所得者の自己負担軽減策を講じているとした。
最後に、「価格転嫁、価格表示の在り方や住宅の購入、医療についても今後詳細な制度設計を詰めながら、国民の心配を払拭していきたい」とまとめた。
次に連合が提起する『社会保障ビジョンと税制大綱』について、花井総合局長と仁平局長が講演した。
まず花井総合局長は、労働者の就労・雇用条件の悪化等を指摘した上で、「連合がめざす『働くことを軸とする安心社会』の実現には社会保障と安定財源の確保が必要である」と訴えた。
積極的社会保障政策の推進に向けては、子ども・子育てを社会全体で支える仕組み作りや、労使代表等が参画する「社会保障基金(仮)」を創設するとした「5つの重点戦略」を提起した。その上で、「一刻も早い法案の成立と制度改革をスタートさせていただきたい」と政府、民主党へ要望した。
仁平局長は、「税制改革基本大綱」は連合の考える税制改革の理念と方向性をとりまとめたものであると説明。今回の第3次大綱については、「我が国の税財政の基本的な機能を回復させ、『働くことを軸とする安心社会』を支えることのできる『公平、連帯、納得』の税制を実現することを目指している」と述べた。また主な特徴として、消費税偏重としないバランスのとれた税体系とすることなどを挙げた。
最後に、仁平局長は税制一体改革のアピール不足を懸念しているとし、政府与党へ対し国民の不安を解消するよう提言した。
約2時間にわたる講演の後、会場と行った意見交換・質疑応答では、「新聞広告等を活用し、税制一体について情報を発信していくべき」「複数税率にはできないのか」「消費税率の引き上げばかりに焦点があたってしまい、本来行うべき財政健全化の議論や長期的戦略が見えてこない」「企業の海外流失を防ぐ戦略はあるのか」等様々な声が挙がった。前原政調会長は一人ずつ丁寧に回答した後「経済成長、行政改革、増税を総合的に据えていく中で、財政再建を行っていくことが大事である」と締めくくった。
前原政調会長は講演後の記者会見で、「現下の日本は国難とも呼べる大変厳しい財政状況であり、与野党を越えて社会保障・税一体改革を国会で議論していただきたい」と強調した。