民主党栃木県連は3月5日、「共生社会」の実現をテーマとした「共生社会創造フォーラムin栃木」を宇都宮市内で開催した。
司会進行を務めた次期参院選民主党推薦候補予定者の田野辺隆男さんは冒頭、「安倍政権の強権的な政治をこのまま見過ごしていては、日本の次世代に大きなツケを残すことになる」と訴えた。「今日のフォーラムのテーマである国民一人ひとりがかけがえのない存在として尊重される社会を作りたい」とし、「今日は地域で日頃から地道な活動を続ける各種団体の実践に学びながら、みなさんと一緒に政策を作っていく集会にしたい」と開会を宣言した。
主催者を代表してあいさつに立った福田昭夫県連代表は、アメリカ同様、日本も格差社会が進んでいることにふれた。「安倍政権がこのまま続けばますます格差が拡がってしまう」と指摘したうえで、「様々な貧困問題は、働き方と税制の問題があることを共通認識としたい」とし、引き続き、格差社会の打破に取り組むことを誓った。
民主党政権では「新しい公共」や子ども手当や高校授業料無償化など「人への投資」に取り組んできた。安倍政権のもとでは公正な分配が行われず、貧困が連鎖、能力を発揮する機会が奪われ格差が拡大している。
この現状に対して、格差の壁を打ち破り、安倍政権がかえりみない一人ひとりに光をあてた「居場所と出番」を実現する政策を作るために、昨年2月に岡田代表が本部長となって「共生社会創造本部」が設置された。
このフォーラムは、昨年12月にまとめられた「中間報告」をもとに、地域で活動する方々からの意見を集約し最終報告を作るために、企画開催されたものである。
第1部では、共生社会にむけて地域で取り組む3団体が、実践事例ならびに基調報告を行った。
「家庭の中に居場所がない子どもたちを何とかしなければならない。目の前にいるこどもたちに手を差しのべたい」。
『NPO法人だいじょうぶ』の畠山由美理事長は、自身の活動をスタートさせた想いを切り出した。
以来、「食べることも着ることもままならない子どもがたくさんいる」と、子どもの貧困が増え続けている切実な現状を訴えた。
「子どもたちの居場所、お母さんの居場所があればストレスも緩和されるし、DVや虐待の問題にも発展しなくていいのになと思ってる」と地域も含めた『居場所』の確保の必要性を提言した。
畠山理事長は「子どもたちは自立したときに幸せな普通の人生を自分の足で築いていってほしい。そんな子どもが多く出て行ってほしい」と願いを込めた。
『宇都宮市女性団体連絡協議会』の小川暢子副会長は、互いに人格を尊重し合い、助け合い、また違いを認め合い、支え合う共生社会作りを目指して約40年にわたり活動を続けている。
家庭における男女平等の意識について、2014年栃木県民調査の結果を引き合いに出し「これらの認識は確実に高まってきている」とした。
一方で、昨今の社会問題にもなっているDV問題が、貧困や死を招く事態を問題視し、「不幸な現状を見過ごすことなく国や県や市町村が対策を講じるべき。予算措置を含め政治の力が必要不可欠である」と課題提起した。
『一般社団法人栃木県若年者支援機構』の中野謙作代表理事は、引きこもりや生活困窮者、さらには就労問題等を多角的にサポートする活動を精力的に行っている。中野代表理事は不登校となる子どもが増え続けている現状を報告した。県内でもいじめを受けて苦しんでいる子どもが多くいることを「大人が認識しなければならない」と訴えた。
有効求人倍率が上昇しているとの報道にもふれ、「企業が求めている人材は即戦力、経験者、有資格者に限られる。引きこもっていたり、ブランクのある者は求められていない」と実態を報告し、「若者の雇用環境は悪化している。にもかかわらずマスコミはこれらを一切報じない」と憤った。
中野代表理事は「当事者を主人公にした面的支援が必要で、地域の力、民間の力も不可欠だ」と締めくくった。
第2部は民主党が設置した「共生社会創造本部」の「中間とりまとめ報告」の内容について長妻昭代表代行が報告を行った。
長妻代表代行は「日本の大きな問題は、格差の壁が非常に高く厚くなって、個人の能力の発揮が阻まれている」と現状をぶつけた。
「教育格差、雇用格差、男女格差などが経済成長を妨げている」と指摘したうえで、「公正な分配による人への投資で、能力の発揮を阻む格差の壁を打ち破りたい」と語った。また、共生社会のポイントとして、「これまでの支える側と支えられる側という考え方からお互いに支え合う仕組みにしたい」とした。
政府を批判する報道機関への圧力問題にもふれ、「批判を忘れた国は必ず大きな過ちを犯す。これは歴史の教訓だ」として、安倍政権の言論の自由をないがしろにした言動を断じた。
長妻代表代行は「一つの色に染め上げるのはポキッと折れやすい国になってしまう。多様な価値観を認め合い、互いに支え合う力を育むことが重要だ」と訴えた。
150名を超える参加者との意見交換では、「いつもこの集会では景気回復、福祉、医療などの話が多いが、今日のように若い人に目を向けた話はとてもよい」、「民主党はアピールの姿勢が弱い。もっと前向きに強いメッセージを出して欲しい」などの意見が出た。